近年、がん医療において放射線治療技術が急速に進展している。中でも定位放射線治療は、放射線の照射域をがん病変などの形状に一致させ、多方向から集中照射して目標病変だけを治療する精密放射線治療として注目されている。熊本放射線外科はこれまでのサイバーナイフに加え2005年5月、定位放射線療法の次世代モデルで、国内3台目となるノバリス・システム(以下、ノバリス)を導入、治療を開始した。以来今日までに約1500症例の治療実績(2007年12月現在)を上げている。
ノバリスの概要を紹介してください。
古後 ノバリスには大きな特長が3つあります。それは、(1)通常の照射方法に加えて個々の細い放射線ビームに強弱をつけて、目標病変の形状に最適化されたビームの集合体として照射する強度変調放射線治療(IMRT)ができる、(2)赤外線とX線の監視システムにより、治療中にも患者さんの位置とがん病変の場所を正確にとらえ、監視・補正することができる、(3)IMRTの照射技術を、定位精度で行える――ことです。
このため、脳内および頭頸部(眼科・耳鼻咽喉科・口腔外科領域)のがんや腫瘍、さらに従来の放射線治療では困難だった体幹部のがん(甲状腺がん、肺がん、肝臓がん、前立腺がんなど)まで治療できます。
治療はどのように行うのですか。
古後 ノバリスのがん治療は、ガンマナイフのように頭部をピン固定する必要はありません。事前にプラスチック製のシェル(マスク)をそれぞれの患者さんの頭や体の部位に合わせて作成し着用してもらうので、体に負担が少なく(低侵襲性)、複数回の分割照射が可能です。通常、がん病変の部位・大きさ・形状に応じて数回~数十回の分割照射を行います(治療期間は数日~数週間)。
治療できるがん病変の大きさについては、従来は不可能だった直径100mmまでのがんが可能で、外科手術の局所切除に近い効果が得られ、これは大きなメリットです。1つの病変に対する治療時間は、監視・補正システムとIMRTによって高精度な照射ができるので、1回20~30分で済みます。つまりノバリスは、外科手術に近い本格治療が短時間・分割照射でできるため、入院せずに通院しながら外来でがん治療が行えます。
ノバリス療法の恩恵を最も受けるのは、どういうがん患者さんですか。
古後 がんの根治や準根治が得られる場合や進行がんの場合でも局所の制御により生活の質を維持できる場合に、ノバリスは最も有効な精密放射線治療です。以上を踏まえれば、これからのがん治療においてノバリス療法は新たな、そして有力な選択肢になると思われます。
【文/中野 不可思】
医療法人社団人優会 熊本放射線外科
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