前立腺肥大症の治療
前立腺肥大症の治療には、薬物療法、高温度療法、手術療法などがあります。症状の軽重、前立腺の大きさ、尿勢の程度、残尿量の多少により、どの方法で治療するかが決定されます。手術療法を行う場合、現在最も一般的に普及している標準的手術法は、尿道から内視鏡を挿入して高周波電流で前立腺を切除する経尿道的前立腺切除術(TURP)です。
TURPは既に70年を越す歴史を有し、安全で長期成績も良好で、確立された治療手段ですが、時には輸血が必要な出血や、低ナトリウム血症といった合併症が起こり得ます。これらの合併症は前立腺が大きいほど起こる確率が高くなります。この合併症を軽減する方法としてレーザーを使用した前立腺治療が開発されました。1992年に前立腺に最初に使用されたレーザーはネオディウム・ヤグレーザーでした。このレーザーは、組織を凝固壊死させて脱落させるので手術の効果が現れるのに時間がかかり、その効果も期待通りではありませんでした。1995年にホルミウムレーザーが前立腺治療に応用されるようになり、1996年にはホルミウムレーザー前立腺蒸散術(HoLAP)が、1998年にはホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)が初めて紹介されました。治療成績はTURPと同等で、しかも合併症はより少なく、術後早期より社会復帰可能な方法として現在多くの施設で試みられています。
ホルミウムヤグレーザーについて
HoLAP/HoLEP共にホルミウムヤグレーザーを使用します。このレーザーは、硬い組織でも十分な破砕力があるので、前立腺のみでなく結石治療にも応用できる汎用レーザーです。とくに泌尿器科領域では経尿道的や経皮的内視鏡結石治療にも使用されています。ホルミウムヤグレーザーは他のレーザーと違い水に吸収されるので、灌流液を使用する内視鏡手術に安全に使用できます。しかもレーザー照射で組織の蒸散、切開、凝固(止血)が同時にでき、レーザーの組織への吸収深度は0.4mm以下と非常に浅く、患者さんに優しく術者は安心して使用することができます。
HoLAP/HoLEPとは
HoLEPは、前に述べましたように安全なホルミウムレーザーを使用して、経尿道的に前立腺を核出し丸ごと膀胱内に落とし、その前立腺を組織切片自動吸引機で小切片にして体外に取り出す方法です。HoLEPでは前立腺を確実に処理でき、しかも術中・術後の出血が極めて少ないため、尿道カテーテルは翌日または翌々日に抜去が可能で、患者さんの不快感が軽減され、入院期間もTURP よりも短縮されます。また灌流液として生理的食塩水を使用しますので低ナトリウム血症は起こり得ません。
HoLAPは、側射型ファイバーを使用し、直接前立腺組織にレーザーを直接照射し、組織を蒸散させ、前立腺の体積を減じる方法で、HoLEPよりもさらに出血が少ない方法です。蒸散に少し時間がかかりますので、前立腺の腫れが比較的軽い、体積30-40cc程度までの患者さんにお勧めしています。
松岡 啓
久留米大学医学部
泌尿器科 教授
昭和49年 久留米大学医学部 卒業
昭和54年 久留米大学大学院医学研究科 卒業
昭和56年 福岡県大牟田市立病院泌尿器科医長
昭和57年 久留米大学医学部泌尿器科学講座 講師
平成1年 カナダ・ブリティッシュコロンビア州立癌センター
平成4年 久留米大学医学部泌尿器科学講座 助教授
平成15年 〃 教授










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